2010年04月12日

パリジェンヌ・ソレックス

 ソレックスは20世紀初めからキャブレターとモペットを作っているフランスのメーカーだ。
 キャブレターのソレックスで私たちになじみ深いのはなんと言っても初代スカイラインGTに採用されたツインチョークトリプルキャブ、そしてモペットでは映画「個人教授」でナタリードロンに恋心を抱くルノーベルレーの、その学友が乗っているのがソレックスだ。ちなみにNドロンとRベルレーが二人乗りでパリの町を走るのはリトルホンダだ。


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 そのソレックスがダイハツで輸入販売されたのは昭和48年頃だったと記憶している、ちょうどその頃は石油ショックも手伝ってダイハツも業績不振だったらしく、ダイハツデーラーに勤める友人から頼まれて、このダイハツソレックスを格安で手に入れたものだ、これは1905年からフランスで作られているヴェロソレックスの最終型となった、つまり1988年にはフランス本国での製造は中止になって、現在ではハンガリーでごく少量、生産が続けられているそうだ。

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 私が手に入れたのは白い車体だったが、実用には役に立たなかったので写真も何もないが、たった4ページのパンフレットが残っているのでここに紹介する。

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 坂道・向かい風も確かにへっちゃらだ、しかしそれは自転車としての話、日本でこれはナンバーを付けたれっきとした原動機付き自転車なのだ、原付としてはへっちゃらとは云えない。

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 速すぎない、遅い、最高速度を20Km/hにおさえて、その代わりスピードメーターも方向指示器も付いていない、法律との取引のようなものだ。

 そしてソレックスは確かに経済的です、1リッターあまりの燃料タンクで100Km以上走る、だが混合油を使わなければならない、ガソリンスタンドでベテランのサービスマンに、「混合油1リッター」というとじゃまくさいと言われ、若いサービスマンにそう言うとハイオクを混ぜてくれる。
 そこでこのバイクには初めから50ccほどの薬瓶のようなボトルが付いてくる、つまりレギュラーガソリン1リッター入れたらこの薬瓶のエンジンオイルをタンクに入れて車体ごと揺さぶれ、と言うわけだ。

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 商店街・裏通りもスイスイと走るが、エンジン音がうるさくて人々の注目を浴びる、その上自転車にも追い越される。

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 確かに自転車のようだが、組み立て式フレームと前輪に載せたエンジンは結構重い、このエンジンは49cc、0,7馬力、遠心クラッチを介して駆動ローラーを前輪タイヤに接触させて走るのだ。
 アクセルは二段階、但しハイでもローでもほとんど変わらない、スロットルバルブというものはなく、ちょっとガスを濃くするだけだ、だがチョークもしっかり付いている。
始動はデコンプを抜いてかける昔のディーゼル方式、ちょっと押しただけでかかるが、ペダルで踏み出すのはちと重い。

 そんなこんなで実用的ではないが私も家内もお気に入りで、休日には取り合いをして散歩に出かけた。
 
ヘルメットが必要になってからはほとんど置きっぱなしになったが、平成の初め頃まで我が家のガレージの装飾品になっていた。


 私は以前、プジョーの自転車に乗ったことがあるが、これも細部が粗雑で、ブレーキや主要なボルトナットなどを国産のものに換える必要があった。しかしソレックスは15年ほどの間に故障はたった1回、鉄製の燃料パイプが錆びて詰まったことがあった事くらいだし、外観にはほとんど錆びもなかったが、よく見るとプレス加工の車体の裏側はしっかり錆びていたしブレーキや例の駆動ローラーもすり減っていたと思う。

 平成2年くらいだったと思うが、自動車屋の管理ユーザーでもある、知り合いと雑談の折、ソレックスの話をしたところ、ぜひにと請われてとんとんと話が決まり割合高値の結納で嫁に行った。
 彼は素人ながらソレックスの車体とエンジンの一部を分解し、塗装をやり直し、粗悪なねじ類を国産に換え、新車同様にレストアした、そして今は彼のガレージの装飾品となっている。

posted by 健太朗 at 23:00| Comment(10) | TrackBack(0) | バイクの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
う~ん いいですねぇ この何とも言えない中途半端感、、 かっこいいし :)
Posted by jr rasta at 2013年02月13日 20:48
健太朗です。
jr rasta さん、コメントありがとうございます。

いいでしょう、こういう原始的な機械はホントに魅力的ですね。
Posted by 健太朗 at 2013年02月13日 22:07
私が初めて所有した車にソレックスのキャブが付いていましたよ。
でもスカGでもなく、べレG-Rでも無くってスバル1000スポーツです。
ソレックスといっても、おなじみのツインチョークではなく、負圧サーボ式で、といってもSUでもなく、京浜CVでもなくって、三国ソレックスと表記されていたと記憶します。

車を手放すとき予備のキャブを記念にと保存していたはずなのに何度かの引越しで紛失してしまいました。

1000ccのスバルを元気に走らせるとキャブはガソリンをがぶ飲みするようで5~6K/Lなんてこともありました。
三国ソレックス負圧サーボキャブは他の車種で採用された例があったのでしょうか?

ソレックスといえばウェーバーと並び称される憧れのキャブでしたが、前輪駆動のモペットとの対照がなんとなくミスマッチな感じで愉快ですね。
Posted by なめネジ at 2013年02月15日 00:21
健太朗です。
なめねじさん、コメントありがとうございます。

私はスバル1000スポーツセダンには、当時少しだけ試乗したことはありますが、そのキャブレターを見た記憶がありません、しかし手元の資料によりますと三国工業製ソレックスBDS36×2となっています。
ソレックスキャブレターというのはミクニ工業がフランスソレックス社とライセンス契約を結んで生産したツインチョークPHH型キャブレターを指しますので、スバル1000スポーツセダンに搭載されていたキャブレターもこのタイプだと思うのですが、私が間違っていたらごめんなさい。

そしてこのタイプのキャブレターはプリンスがスカイラインに使って以降、例えばトヨタ2000GTなどのも使われていましたしたしかベレットやレビンにも一時使われていたと記憶しています、そして1970年代後半くらいまではスポーツカーやレーシングカー用に生産されていましたが、公害対策や電子式燃料噴射の発達によりその役目を終えたと言うことのようです。

スポーツカーにこのような高性能キャブレターを使っていた時代は、よりたくさんの燃料を食わせて性能を上げるという方法が一般的でしたので、日本のクルマにターボチャージャーが付いたのもそんな時代だったのです。

もう、キャブレター、というのは歴史用語になってしまいましたね。
Posted by 健太朗 at 2013年02月16日 22:40
それが
見慣れた(雑誌とかで)例の2バレルツインチョークではなくて独立したキャブが2個、しかも負圧サーボ式で、その上ダウンドラフト(ボクサーエンジンなので)という代物でした。
他ではお目にかかったことがありません。
1000スポーツとその次の1100スポーツと1100スーパーツーリングに採用されたと思います。
1300Gスポーツではありふれたダウンドラフトのゼニストロンバーグ型になり(こいつも水鉄砲みたいな加速ポンプが付いていてまた大喰らい)ました。

BDS36 という型式におぼろげな記憶がありますので間違いない様に思います。

余談ですが
健太朗さんのてんとう虫スバルの項を読んでいて、そういえば16歳で自動二輪免許が取れて軽自動車(4輪)が運転できたな、とか中学生のとき病欠留年で1才年長の同級生は原付を許可で乗り回していたなとか取り留めの無い古いことをいろいろ思い出したりします。
Posted by なめネジ at 2013年02月17日 00:46
健太朗です。
なめネジさんごめんなさい、私は些細なことにこだわるタイプですので我が家のクロゼットを探してみました。そして、

古い雑誌に三国工業製ソレックスBDS36の記事と写真がありました、小さな写真で、しかもモノクロですのではっきり見えませんがどうやら「solex 」の文字があるようです。
しかしこれは一般的なシングルバレルのダウンドラフト・可変ベンチュリタイプのキャブレターです。

なめネジさんがおっしゃる負圧サーボ式というのは可変ベンチュリのことのようですね、可変ベンチュリというのはSU(スキナーズ・ユニオン)キャブやCV(コンスタント・バキューム)型キャブと同じ方式で、SUは油圧でCVはダイヤフラム(空気圧縮)でサーボピストンを制御していますので、このキャブレターはCVキャブと同じタイプだと思います。
ちなみにゼニスストロンバーグはこれの改良型です、つまりゼニスというキャブレターメーカーはソレックスに吸収され、その技術は日立がライセンスを買っているそうです。
1960年代くらいのゼニスキャブはMGやジャガーに採用されていますがいずれもSUタイプの油圧制御のようです。
このころはゼニス・ストレムベリーといっていたようです。

それにしてもミクニがウェバータイプのツインチョーク以外にもソレックスのライセンスを買っていたということは、恥ずかしながら知りませんでした、キャブレターの世界も複雑ですね。
そしてこのBD36というキャブレターはのちにニッサンチェリーにも使われたそうです。
Posted by 健太朗 at 2013年02月18日 22:09
健太朗さん
こちらこそ曖昧な記憶を頼りに書きなぐってお手数をかけてしまいすみません。
「負圧サーボ」は私の造語ではないと思いますけど一般的ではないのですね。
自分の中では、アクセル操作はバタフライバルブで、メインのスロットルはインテークの負圧で開閉するタイプと漠然と解釈しています。
SUもCVもこの範疇だと・・
スバル1000スポーツのはゴムのダイアフラムであることは分解して見ていますのでそういった意味ではCV TYPEということですね。
1300GスポーツのゼニスストロンバーグはこのSU/CV TYPEではなく普通の直接バタフライバルブだけでスロットル操作するものでした。
そしてこのキャブには 日立のマークが入っていました。
当時スバルの電装は日立一色でしたがキャブまでといぶかしく思った記憶があります。
そんないきさつがあったのですね。

またまたおしゃれなフランスのモペットの話を捻じ曲げてしまい相済みません。

拙ブログに本箱から見つけ出したスバル1000のキャブの画像をUPしておきます。
Posted by なめねじ at 2013年02月19日 12:06
健太朗です。
なめねじさん、ブログの写真拝見しました、ダウンドラフトの可変ベンチュリは珍しいですね、いい写真を見せていただきました。

話をねじ曲げたなんて思っていませんよ、気を遣わないでください。
ブログでの会話はちょっとだけかみ合いませんが、こういう話は実に楽しく懐かしいのでちょくちょくお相手お願いします。

こんなにすばらしいキャブレターを造っていたメーカーが、ブェロソレックスにはなぜあんなに単純なキャブレーを使っていたのか不思議に思います。
Posted by 健太朗 at 2013年02月19日 22:53
我が家に40年ほど前に購入し、廃車したSOLEXが眠っています。前輪タイヤがパンクしていますが、パーツはすべて整っています。もう一度直して運転したい気持ちはありますが、中々時間が取れないため、処分考えています。ヤフオクがいいでしょうか。
Posted by 内田 仁 at 2014年09月22日 23:54
健太朗です。
内田 仁さん、コメントありがとうございます。

生まれて40年にもなるクルマが眠っているのですね、よくぞ捨てずに眠らせてやってくださいました。

ソレックスS3800というモペットは、今や貴重な存在です。
決して安く処分するのではなく、きっちりレストア出来る人に譲ってあげてください。
どうか生かせてあげてください。
Posted by 健太朗 at 2014年09月24日 14:22
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