2016年10月27日

機械遺産 その9 最終回

 7月25日、一般社団法人・日本機械学会からスバル360が機械遺産に認定されたと言うニュースが入ってきました。

 そこで歴代の機械遺産、中でも自動車関連についてちょっと調べてみようと思います。

 最終回は、平成19年認定の10A型ロータリエンジンです。

 

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 ロータリーエンジンを最初に実用化したのは1957年、西ドイツのNSUとヴァンケル社との共同研究によるヴァンケルエンジンで、Ro80と言うクルマが発売されました。

 レシプロエンジンと大きく違うのはエンジン本体でピストンのような往復運動する部分はなく、おむすび型のローターが回転運動するだけで動作しています。

 

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 また吸排気をするためのバルブ(同弁機構)が必要ないので振動や雑音が非常に少ないのが特徴です。

 反面、ローターが回転すると燃焼室が移動しますので冷却損失が大きく、従って熱効率が低く、燃費にハンデがあります、またローターの頂点や側面の摺動部が広いのでオイル消費量にもハンデがあります。

 さらに量産化が難しかった原因にローター頂点のアペックスシールがあります、レシプロエンジンのピストンリングと同じような役割のパーツですが、ヴァンケルエンジンの場合は楕円形のハウジング内壁に三角形のローター頂点が高速で摺動しますから、シールそのものの耐久性はもちろんですが、相手のハウジング内壁にも異常な波状摩耗が発生して問題となりました。

 それを解決したのが東洋工業、現在のマツダです。

 

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 ロータリーエンジンの研究開発はトヨタでも日産でもシボレー、シトロエン、ベンツ、そしてロールスロイスでも行われ、試作車がオートショーを賑わせましたがいずれも量産にはいたりませんでした。

 しかしソビエト連邦ではかなり研究が進んで、いろいろな種類のロータリーエンジンが量産されたそうですが、西側では詳しいことは分かっていません。

 

 昭和42年5月30日、世界初の2ロータ・ロータリエンジンはコスモスポーツに搭載され、発売されました。

 

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 10A型ロータリエンジンは、単室排気量491cc 2ローターで、新開発の高強度カーボン材であるパイログラファイトに特殊な方法でアルミを含浸させて製造したアペックスシールと軽量なアルミ合金製ハウジング・サイド吸気ポートと2ステージ4バレル気化器、それに1ロータあたり2本の点火プラグなどの組み合わせにより、110PS/7,000rpmの小型、高出力、低振動のヴァンケル型ロータリーエンジンで、内燃機関の歴史に新しいページを加える画期的なものとなりました。

 しかし、昭和48年に起きた第一次オイルショック以降、省エネルギー志向に切り替わった社会情勢には燃費性能が良くないロータリーエンジンは人気を落とし、また排ガス規制の逆風もあって、次第にロータリーエンジンはその居場所をなくしていきました。

 平成24年6月には最後のロータリーエンジンを積んだRX-8が生産終了となって、市販車からロータリー車が消滅してしまいました。

 しかし来年平成29年はコスモ・スポーツ発売から50年、そして2020年(平成32年)はマツダ創立100周年にあたります。

 クルマのニュースサイトでは16Xと言う新しいロータリーエンジンを積んだスポーツカーが現れると噂しています、ロータリーエンジンの人気は今でも根強いもので平成19年の東京モーターショーに展示されたコンセプトカー大気(たいき)のようなスポーツカーを待ち望む声は大きいようです。

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2016年10月13日

機械遺産 その8

 7月25日、一般社団法人・日本機械学会からスバル360が機械遺産に認定されたと言うニュースが入ってきました。

 そこで歴代の機械遺産、中でも自動車関連についてちょっと調べてみようと思います。

 今回は平成19年認定のホンダ・カブ号F型の自転車用補助エンジンです。

  戦後の混乱がようやく落ち着いて、手塚治虫の鉄腕アトムが少年という月刊誌に連載され始めた昭和27年、人々の足はまだ自動車ではなく高価な自転車を大事に使っていました、そんな頃、自転車にエンジンが付いて遠くまで楽に走行れて荷物を載せても楽ちんで運べる乗り物が発売されました、「自転車バイク」「ばたばた」などとあだ名されました。

 

 昭和20年代の初め、本田宗一郎親父さんは、奥様が自転車で遠くまで買い出しに行かれるのを見て、自転車にエンジンを付けることを思いついたのです。

 戦後の復興には何を置いても交通機関が必要だ、と思ったそうです。

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  そこで三国商工というキャブレターメーカーが作っていた、旧陸軍の無線機用発電機に使われていた、2サイクル単気筒、排気量49.9cc1馬力のエンジンの放出品を自転車に取り付けた訳です。

 

 自転車用補助エンジンとして売り出したのですが、使い勝手の良さからこれが大いに当たって予定の500台が瞬く間に売れてしまったのです。

 

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  それでこれに代わるものとして本田の親父さんは、一からエンジンを作ってしまうのですから凄いのですが、このA型がまたエントツエンジンと呼ばれた本田宗一郎一流のユニークなアイディアで、シリンダーの中央から掃気をするという、ちょっとこれだけ聞いても理解でない構造のエンジンですので、結局幻に終わってしまいます。

 

 その後B型、C型と続くのですが、昭和27年5月、カブという愛称が付くF型が誕生します。

 

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  ホンダカブ号F型は自転車の後輪アクスルシャフト下部に配置され、低い位置からチェーンで真上の後輪を駆動し、軽量で高い生産性があるアルミダイキャストやプレス部品を使って、重量6kgを達成しました。

 白いタンクと赤いエンジンで一世を風靡した背景に流通網の変革がありました。

 

 セールスマンが飛び込みするというそれまでの営業方法ではなく、全国に50,000軒ほどある自転車屋に取扱を勧めるダイレクトメールを送って「定価25,000円、卸価格19,000円。代金は前金で願いたい」と取り扱いを勧めたのです。

 知名度の低い新進の会社が通販のような売り方をするのですから、詐欺とも誤解されかねなかった時代ですが、5000軒の自転車屋の取り扱い希望があり、12月には月産台数7000台を突破したそうです。

 そして後には世界最多の生産台数と世界最長寿を誇る、あの、スーパーカブへと発展するのです。

 機械学会では、ホンダカブFは大量生産の工業製品としての二輪車の市場を大きく拡大するきっかけとなり、以降の小型二輪車の原点となった歴史的な機械といえる。としています。

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2016年10月01日

機械遺産 その7

 7月25日、一般社団法人・日本機械学会からスバル360が機械遺産に認定されたと言うニュースが入ってきました。

 そこで歴代の機械遺産、中でも自動車関連についてちょっと調べてみようと思います。

 今回は平成19年認定のホンダCVCCエンジンです。


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 昭和40年代、高度成長期になると「公害」という言葉がマスコミを賑やかすようになってきました。

 工場から出る煤煙もそうですが、まず自動車の排気ガスがやり玉に挙がりました、このことは日本だけではなく、特にアメリカでは厳しい規制がかけられて、昭和45年になると「まず達成出来ない」と言われるほど厳しい規制が1970年大気浄化法改正法として上院議会に提案されました、マスキー法です。

 自動車が排出する有害物質と言われるものは主に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)があります。

 これらを1975~6年までに1970年のレベルより1/10以下にすると言うもので、出来なければ期限以降の販売を認めないというのです。

 もちろん日本車もアメリカで販売する以上無視することは出来ません。

 でもこれは実は日本よりアメリカ国内で強い反発があり実際にマスキー法が成立するのは1974年(昭和49年)で、当初の目標値は実質ないがしろにされました。

 しかしこの厳しい規制をいち早く達成したのが日本のメーカー、ホンダのCVCCであり、ロータリーエンジンでは、マツダのサーマルリアクターなのです。

 さて、CVCC(シーブイシーシー、Compound Vortex Controlled Combustion)は、昭和47年、ホンダが発表した低公害エンジンで、複合渦流調整燃焼方式と言います。


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 CVCCがCIVIC(シビック)とつづりが似ているところから、後からこじつけたなどという人もいます、しかしこれがあの厳しいマスキー法を世界で初めてクリアしたのですから、誰がなんと言おうとホンダの技術の勝利なのです。

 ガソリンの理論空燃比は14.7と言われています、つまりガソリン1gに対して空気が14.7gの混合気で燃やすと一番よく燃える、と言うことなのです、自動車の場合、アクセルペダルの踏み加減(スロットルの開度)によって変わりますが、出来るだけ空気を多く(混合気を薄く)して燃焼させる方が総体的に排気ガスに含まれる有害ガスは少なくなります。

 そこで、エンジンの燃焼室に送り込む混合気を出来るだけ薄くします、ところが余り薄くするとプラグで着火できません、それでも着火さえ出来ればエンジンはそれなりの性能で作動します、それなら着火できるだけの大きな炎を作ってやれば良いのです。


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 そこでホンダは小さな副燃焼室をもうけました、そこにプラグで着火できる混合気を送り込んで着火し、その火炎から主燃焼室の薄い混合気にも着火すると言う構造になっています。

 ただそのためには、キャブレターや吸入マニホールドに副燃焼室用のポートが、またシリンダヘッドに吸入バルブが必要となるなど、いろいろな工夫を施さなければなりませんので製造会社としては決して儲けが見込めるエンジンではなかったようです。


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 副燃焼室のヒントはディーゼルエンジンにありました、ディーゼルに使う軽油は着火性は良いのですが引火性は良くありません、ガソリンのように爆発しにくいのです、それには副燃焼室のような構造は有効です、予燃焼室式や過流室式と言うエンジンがあります。

 しかしCVCCエンジンの評価は高く、米国自動車技術者協会は20世紀優秀技術車に選んでいますし、社団法人自動車技術会はマスキー法を後処理(エアポンプや触媒等)なしでクリアできる最初のエンジン、としています。

 機械遺産は日本の排出ガス低減技術を世界のトップに引上げた歴史的な機械、として認定されました。

 そしてシビックに始まって2代プレリュードまで、1980年代までのホンダ製の自動車のほとんどにCVCCが搭載されました

 

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posted by 健太朗 at 22:29| Comment(3) | TrackBack(0) | くるまの雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする