クーペというのはフランス語で「切られた馬車」という意味らしいですね。
2人用の屋根付き馬車で、途中で切った形の個人用なので御者の座席もないものが多いといいます。
自動車の場合はわりに曖昧で2ドア2シートのみならず2+2や4ドアクーペなどというものもありますが、おおよそ2人用のスポーティーでかっこいいクルマを挿すようです。
私はやっぱり美しいクルマでないとクーペとは呼べないと思っています。
外国にも日本にも美しいクーペはいろいろあります、しかし時代によって美しさを感じる人の目は違うようで、今、美しいクーペを数十年前の人が見ても美しいとは言わないかもしれません。
そして、今の人が昔のクルマを見て、今でも美しい、というクルマが当時は不人気だったという場合もあります。
私は、フォルクスワーゲン・カルマンギアは美しいと思うしマツダR360も十分美しいと思っています、しかし、現代のようにコンピュータで無駄なく創られたクーペはアストンマーチンやマセラティのようなお高いクルマでないと美しく見えないのはどういうわけでしょう。
さて前置きが長くなりましたが、ホンダ1300クーペというのは美しいと思いませんか、私は市販された国産クーペの中では最も美しい一台だと思っています、 日本のクーペにはデザインにお金を使った美しいクーペも多いのですが、なぜか市販されなかったり発売された時点では不細工になっていたり、というものも目立ちます。
ホンダ1300クーペはホンダの社内デザイナーの作品だと聞きますが、そして、作りやすさを考慮した合理的なデザインですがホンダらしい美しさがあると思っています。
本田宗一郎親父さんの時代のクルマって感じがして好きですね、わたしは。
本田宗一郎親父さんらしさというのはメカニズムにも見られます。
まず何と言ってもあのDDACエンジンです、親父さんのこだわりでどうしても空冷式エンジンということで水冷式のウオータージャケットの部分に冷却水ではなく空気(強風) を通して冷却するというメカニズムで、DDACはデュオ ダイナ エア クーリング システムというのです。
親父さんは「ラジエターを空気で冷やすのだから初めから空冷にすればよい」と仰って、空冷派だったそうです、確かに空冷はラジエターがない分、重量が軽く出来ますし、部品点数が少なく故障も少ないというメリットがありますが、自動車というものは水冷式エンジンで発達してきましたので水冷式と同じように使えないと売れないのです。
例えばヒーター、エンジンの排熱を利用して車室内を温めるのですが、これが空冷ではうまくいかないのです。
また、エンジン内の高温部と低温部の平均化が出来ないので、F1レースのフランスGPでのRA302のようにエンジンが炎上するようなこともあって一般の評価が分かれたのです。
しかし、そこの所をうまく設計してしまうのがホンダの技術の優れたところで、まずまず普通の乗用車として静かで扱いやすく、技術的な問題はなかったのですが、結果、重量が重くなってしまったのと、もう一つ、ホンダの初期のエンジンに共通するのは高回転・高性能だというところで、このクルマに乗った人は例外なくぶんまわすものですから暫くすると、弱いエンジン、のレッテルを張られてしまったのはこのクルマの不幸でしたね。
私も初期型に乗る機会があったのですが、ほんの短い距離で時速100kmに達する高性能ぶりを楽しむことが出来ましたが、お客様にしばらく乗ってもらって3万kmも走ったころにはがっかりするほど疲れたエンジンになっていたことを思い出します。
サスペンションにも凝ったメカニズムがあります、クロスビーム式独立懸架というホンダ独自のメカニズムがリアサスペンションに採用されていました。
これは、トレッドいっぱいにクロスさせた長い車軸をリーフスプリングで吊り上げた構造で,キャンバー角の変化が少ないことがメリットでした。
また、フローティングジョイントと言って、ビームが上下してもリーフスプリングのねじれがビームに伝わらない構造で、常にスプリングを安定させるというものです、高速コーナリング時の安定性を向上させ、FF特有の性質であるタイヤのイン巻き込みを利用して直進安定性を向上させたという狙いがあったのですが、DDAC空冷エンジンが重たいのでアンダーステア強く、必ずしも評判が良くなかったのですが、私などは、これくらい癖があるほうがFFらしくていいなと思ったものです。
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