やすらぎのファミリアAP

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 昭和52年、ファミリアAPが発売された、世はハッチバックファミリーカー時代の始まりの頃である。


 ハッチバックと言えばヨーロッパの大衆車はもっと古くからスタンダードになっていた、古いところではシトロエン2CV、昭和52年の最新型ならアルファスッドをあげたい、歯車がひとつ噛み違えれば日本の某ボクサーエンジンを載せたクルマになっていたかもしれないというクルマだ。
 フォルクスワーゲンはゴルフに変わり、チンクェチェントは126に、ルノー4は5に、はたまた2CVやディアーヌの後継車にはLNというスタイリッシュで小さなハッチバック車に変わっていこうとする時代だ。


 日本車ではやっと初代シビックにそのままの形でハッチバックが着いた、ミニカはガラスハッチで登場、もう少し大きなクルマではアコードやカローラLBなどがあるが、ファミリアのようないかにもファミリーカー然とした5ドアのハッチバックは初めてであった。
 もう少し後になるが、パブリカスターレットがハッチバックにモデルチェンジ、カローラにはFX、三菱はミラージュなどたくさんの小型ハッチバックが登場する。
 ただ、この後前輪駆動車の時代がやってくるのだが、ファミリアやスターレットは後輪駆動を踏襲、ちょっと古くさいイメージが付いてきたが、初期の前輪駆動はジョイントなどの関係でハンドルの切れ角が小さく、小廻りが利かないなどの欠点があり、これはこれで意味のあるものだった。

 グランドファミリアという目立たないクルマがあった、初代サバンナのボディにロータリーエンジンではなくファミリアプレストの1300㏄レシプロエンジンを載せたもので、ちょっと大きなファミリア・ファミリーの一員である。
 このサバンナ・クランドファミリアの車台と骨格を改造、オーバーハングを詰めて、2代目コスモのフロントグリルをあしらったものがファミリアAPだ。


 APとはコスモに習って公害対策を表すアンチ ポリューションの頭文字だ、その名の通り51年度排ガス規制をクリア、燃費も10モードで14.5km/lと当時としては優秀な数字を発表していた、ただし私が3年7ヶ月約3万5千キロ乗った平均燃費は12.25km/l、主に通勤用だ、この頃はあまり遠出はしなかった。

 当時の私はグランドファミリアのボディの何となく過剰に体脂肪が付いた"やわ"な印象が好きではなく、中古車のファミリアAPに乗る際少しくためらったものだった、しかし実際はグランドファミリアほど"やわ"な印象はなく、ふんわりとした乗り心地に安らぎさえ覚えるほどだった。
  しかし高速で走らせるとその乗り心地が少し堅くなるのは良いのだが同時にエンジン音が非常にやかましくなるのには困ったもので、まずまず80から100km/hが限度と言うところで、決して遠くに行こうとは思わせないクルマだった。


 映画「幸せの黄色いハンカチ」では武田鉄矢一行が赤いファミリアAPで網走から夕張まで旅をするのだが、あれは高速道路ではなくゆっくり旅だったのだろう。


 その代わり普段の家財道具としてのファミリアは実に使い勝手がよく、大人4人がゆったりと乗れて荷物もたっぷり積めるし、ちょっと大きな買い物をしても配達をお願いしないで済むから経済的、なんて笑い話をしたものだ。

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 さてこのファミリアAP、ファミリアプレストから前輪駆動のBD型への"つなぎ"のような印象だったが、発売から3年で89万台以上を売るという大成功を収めたクルマだ。
もちろん途中でマイナーチェンジもあり、エンジンも1400㏄にグレードアップ、オートマチック車やライトバンも追加された。


  昭和55年フルモデルチェンジされ、時代に即した前輪駆動になったが、ライトバンはなんと昭和60年12月まで生産された、そしてハッチバック車はさらに主要部分をそのままに意匠を凝らして、東南アジアでMR90の名で現地生産されたということである。

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                          このクルマで特筆すべき技術がある。
                          このボールジョイントはアメリカのTRW
                          というメーカーのものだという、ボールを
                          受けている金属製のお皿とともに圧縮し
                          た樹脂で固めている。
                          実はこの頃からボールジョイントが強く
                         なって、摩耗交換することが少なくなって
                          いった。
                          ということは、このような技術をどのメー
                          カーでも採用しているのではないだろうか。